同じ『葛根湯』でもメーカーによって分量が違うのは何故?満量処方って何?
Q:同じ『葛根湯』でもメーカーによって分量が違うのは何故?満量処方って何?
A:漢方薬はどの生薬をどのくらい使うのか、「日本薬局方」で細かく定められています1)。「日本薬局方」で定める『葛根湯』には全部で4種類の処方パターンがあります。そのため、この4種類のうちのどの処方に基づいた『葛根湯』なのかによって、生薬の分量が異なります。(下記表参照)
生薬 | 処方① | 処方② | 処方③ | 処方④ |
カッコン | 8g | 4g | 4g | 4g |
マオウ | 4g | 4g | 3g | 3g |
タイソウ | 4g | 3g | 3g | 3g |
ケイヒ | 3g | 2g | 2g | 2g |
シャクヤク | 3g | 2g | 2g | 2g |
カンゾウ | 2g | 2g | 2g | 2g |
ショウキョウ | 1g | 1g | 1g | 2g |
合計(満量) | 25g | 18g | 17g | 18g |
(第17改正日本薬局方「医薬品各条」より1))
「満量処方」とは「日本薬局方」で定められている処方通りの分量(処方の1日最大配合量)で作られた漢方薬のことを言います。そこから量を減らせば「3/4処方」「1/2処方」になります2)。
生薬をたくさん使用した「満量処方」が良いように思えますが、そのことを証明するエビデンスは現在のところありません。それは、今まで、患者の証を見て投薬される漢方薬は個の医学であり、集団を対象として統計学的に評価がされるランダム化比較試験にはなじまないという意見が多かったためです3)
葛根湯の原料となる生薬は複数の基原植物が使用され、処方パターンによって生薬の量が違うこと、生薬から葛根湯エキスを抽出し添加剤などを加えて製剤化する方法や、品質管理の方法も一つとは限らないことなど総合的に考えると、生薬をたくさん使用した薬の方が良いとは一概には言い切れないようです。その分、体への負担が増える場合もあります。
白石薬品の葛根湯エキス顆粒DSは処方③の1/2量です。製造メーカーの見解によると4)処方③に近いものは中国では群雄割拠の三国のころに、よく使われたそうで、現在の日本人の体質に合うのではと考えられています。1/2量にしているのは、葛根湯は証が合えば半量で十分効果があり、証が合わない人には投与量を増やして用いても、不眠・尿量減少・手足のむくみ・頭痛などの副作用ばかりが強く出ることがあると考えられているためです。
日本医薬品集に登録されている葛根湯は百数十種類あります。各社、様々な処方パターン・量・剤形の葛根湯の商品を揃えているようです。これらの中から自分の証にあうものを選ぶのが漢方薬を使用する上で大事なことなのかもしれません。
1)第17改正日本薬局方「医薬品各条」
2)厚生労働省事務連絡 平成19年9月20日 「第15改正日本薬局方の制定に伴う医薬品等の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)について」
3)津谷喜一郎、新井一郎、元雄良治 漢方とエビデンス からだの科学増刊 P45~48 2011年7月1日 日本評論社発行
4)製造メーカー社内資料
白石薬品の「葛根湯エキス顆粒DS 12」の詳細はこちらから