2016/10/31

かぜと漢方

「かぜ」は、大きな持病がない人では、安静と充分な睡眠と栄養を取ればほぼ治ります。でも、発熱、痛み等の症状は出来るだけ早くよくなって欲しいものです。「かぜ」については、西洋医学的にもかぜのウイルスに直接効く薬はありません。発熱、鼻水等の症状をやわらげる(対症療法)薬を用います。

伝統医学である漢方ではかぜについて 以下のように考えています。現代医学的で「かぜ症候群」と呼ばれる病態は、ウイルスによる感染症であると広く知られていますが、日本の伝統医学である漢方では六淫の邪(漢方で考えられている外来性の発病因子の一つで、ウイルス・細菌などの病因微生物もこれに含まれる)の一つである風邪(ふうじゃ)を生体が感受したことによっておこるというふうに考えられています。

かぜをひいたときによく飲まれる葛根湯は今から2000年も前に書かれた「傷寒論」という書物に記載されている処方のひとつで、悪寒・発熱・頭痛・無汗(汗をかいていない状態)および項背部のこわばりを目標に投与されます。寒気がして首や肩のこわばりがあり、かぜかな?と思った時にはすぐに葛根湯をお湯に溶かして飲むとよいでしょう。飲んだ後、体が温まりうっすら汗をかくぐらいがちょうどよい加減です。風邪を汗とともに体の外に追い出すイメージですね。ただし、大事なのは無汗であることです。

漢方薬は体質や症状に合わせて選ばれますので、以下を参考に自分に合った漢方薬をあらかじめ探しておいて手元に置いておくと便利ですね。

 

体力の傾向 発汗状態 処方名 投与目標となる主な症状
   あり なし 麻黄湯 まおうとう 関節痛、頭痛
なし 葛根湯 かっこんとう 頭痛、肩や首筋のこわばり
なし 小青竜湯 しょうせいりゅうとう 水様の痰、鼻水
自然発汗あり 柴胡桂枝湯 さいこけいしとう 頭痛、食欲減退、腹痛、悪心・嘔吐
自然発汗あり 桂枝湯 けいしとう 頭痛、発熱、軽い病気
   低下 寝汗など 麦門冬湯 ばくもんとうとう 喉の乾燥感、粘り気の強い痰

 

**葛根湯(かっこんとう)**

処方構成は次のとおりである([ ]内は基源となる植物)。葛根(カッコン)8グラム、麻黄(まおう) [マオウ]・大棗(たいそう)[ナツメ]・生薑(しょうきょう)[ショウガ]各4グラム、桂枝(けいし)[ニッケイ]・芍薬(しゃくやく)[シャクヤク]各3グラム、甘草(かんぞう)[カンゾウ]2グラムを基本とし、症状により薬量を増減したり、他の薬物を加味する。煎剤(せんざい)として用い、煎じるときは、葛根と麻黄を先に煎じてから他の薬物を加え煎じるのが正法であるが、今日では同時に煎じることが多い。『傷寒論』のなかの太陽病中篇(へん)には、「首筋から背中にかけての筋肉が堅くこわばり、汗が出ずに寒気がする者には葛根湯を与えると治る」と書かれている。このような症状はインフルエンザをはじめとする急性熱性伝染病の初期に現れることが多いために、本処方は一般にはかぜ薬として名高い。

参考資料:日本大百科全書(ニッポニカ) 医師会ホームページ、今日のOTC薬 –解説と便覧- 2013年 南江堂

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